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2023年05月08日
このたび当社では、有機EL材料を水に分散してインク化する技術を開発しました。従来の真空蒸着法よりも省エネルギーで低コストな塗布法(印刷法)による有機EL素子の製造に用いることができます。
【従来技術について】
Alq3のような典型的な有機EL材料は有機溶剤や水に溶けにくいため、通常、塗布型有機EL素子の製造に利用できませんでした。
溶剤に可溶性の有機EL材料を使った場合でも、上層の成膜時に下層侵食が起こるため、「HTL(ホール輸送層)/EML(発光層)」のような積層構造を塗布法で作ることは困難でした。
【開発技術について】
大阪公立大学 八木繁幸教授のご協力のもと、当社が長年培ってきた乳化・分散技術を応用して発光性金属錯体(n型EML材料)の水系インクを開発しました。
本水系インクを用いることで、塗布法によりn型EMLを成膜することができ、水系インクは下層を侵食しないため、有機溶剤溶液で成膜したHTL上に成膜できます。
本成果は査読付き国際論文誌に掲載されました。
”Water-based dispersions of luminescent metal complexes for wet-processed multilayer organic light-emitting diodes”, Molecular Crystals and Liquid Crystals, 2022年, 第744巻, 31-36ページ, https://doi.org/10.1080/15421406.2022.2055257。
また、本水系インクで形成した塗布膜は、成膜後は水に溶解しないため、使用する構成材料の水系インクを取りそろえることで、複数の溶剤を使用することなく、水のみで容易に多層構造を形成することができます。
人や環境にやさしい水系インクなので、SDGsにも貢献できます。
ご提供材料の水系インクの試作検討も行いますので、お問い合わせください。